歯並びをよくすることで得られる利点はなんでしょう?
それは、単に見た目が美しくなることだけではありません。混み合った歯並びの状態を解消してあげることで、むし歯や歯周病の予防にも大きな効果があります。また、歯並びをよくすることでそしゃく機能がよくなり、消化器への負担も下がります。それだけではありません。実は、この「よくそしゃくできること」には、健康長寿のための大変重要な秘密が隠されているのです。よくそしゃくできるようになると、唾液の分泌が促進されます。唾液には消化酵素など多くの酵素が含まれていますが、その中にペルオキシダーゼという酵素があります。これが現在きわめて注目されているのです。この酵素は、食品中の様々な発ガン物質やその疑惑物質の毒性に対して、相当の毒消し力を示すことが研究で明らかになっています。そして唾液は、ガンだけでなく、動脈硬化、糖尿病、心臓病、さらには老化にも密接に関係することが判明しているのです。しかし、食物を単に唾液と混ぜるだけではその毒消し力は小さく、よくそしゃくしないと大きな効果がないことも研究で明らかになっているのです。よくそしゃくするためには、もちろん健全な歯列がなければ難しいでしょう。もうひとつの利点は、歯並びがよいほうが、絶対的に他人への印象がよくなるということです。特に欧米諸国では、歯並びがいいと、ステイタスの高い仕事に就くことが可能です。それだけ自分の体に責任をもっているわけですから当然だと思います。欧米人にとっては、ブランド品より自分の体のほうがプライオリティは上だということは、当たり前のことなのです。
将来の健康のためにも、"予防歯科治療"としての矯正治療に対する意識を高めることは、大変素晴らしいことと考えております。
歯並び・噛み合わせの矯正治療をする際、『出来る限り抜歯は避けたい』とほとんどの患者様は望まれることでしょう。もちろんのことなのですが、私(荒谷)も同じ思いです。昔は“便宜抜歯”などと言われ、精密検査もすることなく、ただやみくもに小臼歯が抜歯されていた時代がありました。そして、その時代のままのスタイルで治療されている矯正歯科医も今なお多く存在します。従って、非抜歯治療で非常に良い結果を出している多くの矯正歯科医は、あまりにも簡単に小臼歯が抜歯されていく現状に警鐘を鳴らしています。彼らは、非抜歯で健康な歯列を獲得できることを現場で数多く実証しているからです。しかし中には、小臼歯を抜歯したほうが好ましい結果を得られる場合もあります。抜歯するか抜歯しないかは、お口の状況をトータルで考えた上で、最適な判断を下すことになるのです。
歯並び・噛み合わせの矯正治療を希望される患者様の多くは叢生(そうせい=デコボコに歯が混み合っている状態)をともなっています。叢生の原因は、歯の大きさとあごの大きさの不調和です。つまり、4人掛けの椅子に5人も6人も座っているような状態です。
これを解決するには、基本的には椅子を大きくする(あごを広げる)か、座っている人を減らす(通常、犬歯の後ろの小臼歯を抜歯して歯の本数を減らす)か、どちらかになります。成長発育期のお子様は、上あごを広げることが可能なため、早い時期に治療すると、将来、非抜歯で治療ができる可能性は高くなります。しかしながら、下あごはほとんど広げられません。下あごの成長は、ほぼ遺伝によるもので私たちはその成長をコントロールできないのです。したがって、上あごを広げても、下あごの成長が追い付かなければ大人になったときに部分的に『抜歯もやむなし』となることがあります。また成人の場合には、成長発育が終わっていますので、叢生の程度が大きければ抜歯しなければならない確率が高まってしまうのです。
もし成人の叢生を強引に非抜歯で治療すると、口元が出てしまい口が閉じづらくなったり、歯槽骨から歯根が出てしまう危険性もあります。その結果、歯周病になりやすい環境を作ることになります。歯並び・噛み合わせの矯正治療が原因で歯周病を併発させてしまい、歯を抜くことになったら、こんなばかげた話はありません。
患者様のお口の中の状況は千差万別です。また、定める目標にも違いがあるため誰もが同じ治療方針とは限りません。各々の目標に到達するために、ある人は歯を抜く必要があり、ある人は抜く必要がないということです。また、抜歯部位、本数も人により異なるのです。
確かに抜歯は大切な問題です。抜歯する場合と抜歯しない場合で、それぞれどのような治療結果になる可能性があるのかについて納得ゆくまで説明を受けることが大切だと私たちは考えます。そのために矯正治療だけでなく、咬み合わせ専門医としての経験、高度な技術、結果を予測する高い知識力を総動員して診断を行い、患者様にわかりやすく説明することは私たちの責務であります。 歯並び・噛み合わせの矯正歯科治療を行う最終目的は、永久歯列を顔(口唇や口の周りの筋肉など)とのバランスを考えながら機能的に整えることです。
「歯を抜くこと」や「歯を抜かないこと」は矯正歯科治療を行う上での手段であって目的ではないのです。
当院では、米国を中心に世界的スタンダードとして認められるProgrammed and Preadjusted Appliance System (PPAS)を中心に、患者様ひとりひとりに対してオーダーメイド型の治療を行っております。
1.初診・相談(30分)
初診表に症状などを記入します。まずお口の状態を診させていただきます。
その後に診療のあらましをご説明させていただきます。(矯正治療の方法、治療期間、治療費等)その際、ご了解が得られた場合、簡単な検査(レントゲン等)を加えさせていただくことがございます。
この日に矯正治療を始めるかどうか決定していただく必要はありません。
治療内容や費用など気になることを納得いくまでご相談ください。
ゆっくり考えて後日返事を下さって構いません。これから基本診査および概略の説明は保険診療の範囲内で行われます(3千円程度かかります。)
2.精密検査(約1時間)
お口・顔面のエックス線写真を2枚撮らせていただきます。骨格を含めた歯並び・咬み合わせを精密に診断するために必要です。
次に歯の型取りを行います。これにより、術前の歯の模型をつくります。咬合器(咬み合わせの形やあごの関節のずれを診断するための器械)に歯の模型を装着し、現在の咬み合わせの状態を診査します。これらの諸診査は個々の状況に応じて最適な装置を選択し、どのようにゴールに向かって治療を進めるかを決定するために非常に大切な検査です。治療計画を含む診断に約1週間かかります。診査結果は、上記全ての分析をお見せし、次回のコンサルテーションで詳しく説明させて頂きます。
3.カウンセリング(約30分~1時間)
(精密検査による診断結果を詳しく説明させていただきます。)
精密検査の資料分析を元に、治療方法・治療期間の目安、装置、治療費用などの詳しい説明をさせていただきます。この結果をふまえて、矯正治療をされるかどうか決めて頂きます。
上下顎前突症例
重度下顎前突症例
これから治療開始を考えている患者さんと合致する骨格パターン、歯並びの別の患者さんの、当クリニックにおける実際の治療結果を写真や動画を用いて詳しく説明させて頂きます。
4.矯正治療の開始・調整
(この段階から治療開始となります。)
多くの場合、最初は上から装置をつけてスタートし、しばらくした後に下へも装置をつけます。
まず、治療前のお口やお顔の写真を撮影させて頂きます。これは、術前の唇の形や歯の見え方、顔貌の状態を記録しておくのが目的です。治療を進めていむに従って、それらが変化していくのかを常に把握していかなければ、美しい顔貌といったゴールへ到着することが困難になるからです。